竿の善し悪し

ロッドの良し悪し 
 私は6歳の時から兄と釣りをしてきました。最初はのべ竿(竹でできているそまつな1本竿)で雑魚 (ハヤ、オイカワ) 釣りから始まりました。 その後、竹の並次竿、グラス、カーボン竿と世の流れに沿って素材が変わってきました。 釣り暦も小学校4年生の時にミャク釣りを覚えてからヤマメ釣りに目覚め夢中になったのを覚えています。 中学生になってバスや電車を使い箱根や丹沢を釣り歩きました。18歳を過ぎる頃からは兄と奥多摩、秩父方面へ出かけていました。遠くは奥鬼怒へも良く行きました。  
 当時住んでいた箱根は自然豊かな里山で、子供達の遊びは空き地でソフトボールをしたり野山を駆け回り小鳥や昆虫を捕獲することくらいでしだ。 幼い兄弟は春になると川や水路で小魚を捕るのが最大の楽しみでした。家から持ち出した味噌こし笊でホトケドジョウをすくい捕り、山の湧き水を引いた庭にある水瓶に入れてただ眺めているだけで胸がときめきました。 そして小学校に入学したころから兄弟は魚釣りに夢中になり、地元で大川と言ってた早川へ毎日連れ立って釣りに行きました。ミルクの空き缶に鼻をくっつけて泳ぎ回るハヤやオイカワのめまぐるしく泳ぐ様を観て静かにさせようとイジンゼリ(クレソン)を蓋かわりに入れたのを憶えています。 兄弟の釣りは川、湖(芦ノ湖)海(小田原から真鶴にかけて)多種多様にわたり、運転免許を取得してからは年間を通して釣りにやたらと時間を費やしました。幼少のころから始めた釣りも還暦を過ぎた今では時間の制約と老いたことでフライフィッシングだけに専念しています。
   数年前に1番の釣友であった兄が他界した後、兄のやっていたフライショップを引きついて営業しています。利益の無いこの店の1番の利用者は私自身ではないかと思っています。店では以前から兄のデザインしたオリジナルロッド(チャリスペ)を販売していました。このロッドブランクの在庫が残り少なくなり、引き続き作ろうと話をすすめたところブランク製作メーカーの事情により図面やマンドリルが不明になり製造が不可能になりました。 他の製作工場へ残り少ないブランクを元に忠実なコピー商品を依頼しましたが現実は厳しくなかなか上手く行きません。何本かの試作品を仕上げましたが、ラインを通して川で釣りをすると格段の差が有りました。実際に使ってみないと結果が出ないことも判明し、いかにロッドが微妙に繊細であることも改めて感じました。  
 さて、このたびフライロッドを作成にあたり私なりに感じた釣竿論を記します。 私が思うには釣竿の基本はどんなに小物つりの釣竿でも自重で曲がってしまう釣竿は使いにくいのではないかと思います。フライロッドも10m近い鮎竿も例外ではないように思いす。釣竿は魚が釣れた時に魚の重さや引きの強さで初めて曲がるのが理想です。また餌や毛ばりを飛ばす時に弾力を利用してポイントへ飛ばすために曲がるのが目的です。風やちょっとした重心の移動で必要以上に曲がったり、振れては道具として使いにくいような気がします。フライロッドも同様に素でゆっくりと振った時点では曲がらずラインの重さで少しづつ曲がりはじめるのが理想のような気がします。ラインの出た長さ(重さ)によってティップからバットへ徐々にパワーポイントが移動して行くロッドは誰でもが投げやすくコントロールしやすいわけです。このパワーポイントは魚の引き具合にも言える事と思います。けして軽いとか番定が低いからといって自重で曲がるのは本来の釣竿から外れているように感じます。私は自分のキャスティングが下手なのは重々承知です。下手だからこそ気が付く事も多々あると思います。 世の中には特殊の竿が多すぎます。特殊な竿は限られた理論でしか使えないように思います。それらの多くは障害物を避けて10cmの円の中に投げるには相当の熟練が必要です。さらに技術が有っても釣り場を選ばなければならないと思いまいす。川によっては魚のフィーリングレーンから5cmずれただけで食ってくれない川も多々あります。樹木や草が被さったポイントへタイトなループで奥深くキャストしなければならない場合もあります。そのような目的を達成しやすいロッドが使いやすいロッドと言えるでしょう。ラインスピードも適度にゆっくり投げられトリックキャストも投げやすいロッドであればなお良いと思います。 また、ロッドの調子はフキングにも影響します。硬すぎるとあわせ切れをおこすし、軟らかすぎるとティップの移動が遅れフキングが遅くなってしまいます。遅れるだけでなく浅くバラシも多くなります。ちっぽけな店ですが初心者を釣り場へ案内する事が多々あります。フィールドでガイドをしたある日、初心者が何時もと違うティップの柔らかいロッドを使用した時、彼はその日1日中タイミングが遅れたままでした。異なる幾つかのロッドをふだんから使用している私は最初の1・2匹の魚を除いて無意識のうちに修正し、まったく感じていなかったのです。本当に良い経験になりました。
 フキングはロッドの調子によって遅い、早いだけでなく強い、弱いそしてトルクまで大きく関わります。またフキングのしかたは人によって異なります。必ずその人そのタイミングに合ったフッキングが存在します。人によってはラインスラックが在ることによって絶妙な合わせのタイミングになる方がおられます。おおむねロッドのティップを上げて釣る癖のある人はその傾向にあります。どちらかと言えばティップを下げラインスラッグの少ない釣り人の合わせはソフトで遅めです。少し強く合わすだけで合わせ切れを起こす可能性があるからです。ソフトに合わせると言われても初心者には具体的にどのように合わせたら良いのか判らないのが通常です。一般的には始動は早くそしてソフトでトルクのある合わせがベストです。始動は早くズルとし針先がたたらグイとロッドを曲げて魚の口へ刺し込む様なフキングです。判り難いがこの様な合わせのタイミングはごく小さいフライ(ミッジサイズ)に必要不可欠です。 また極端に柔らかいロッドを使用している釣り人やロングティペットロングリーダー(20フィートを超える)を多様している釣り人の多くはリダースラックが大きく、その分だけ早く、大きく合わせなけらばフライの始動が遅れてしまいます。これらの釣り人の特徴としてロッドを立てると同時にラインを大きく手でたぐります。しかも掛けた後とっさに河原を活きよい良くバックする方もおられます。釣りの方法として理に適っていますがあまりかっこは良くないように思います。
 
初心者はできるだけ特殊の釣りをせずノーマルなフライフィッシングを推奨いたします。なぜならばそれを良しとしているベテランフライマンの多くがノーマルなフライフィッシングを経て達したテクニックだからです。 趣味の世界ですから多種多様の釣り方や道具(ロッド)が存在するのは当然です。 考えてみるとフライフィッシング(釣り)をするにはロッド(他の釣竿も含む)はゴルフのクラブ同様に1本や2本では機能的に無理がいくのです。ゴルフをプレーする人にクラブ1本でプレーをする人がいないのと同様です。対象河川の大小や対象魚のパワーによって使い分けなければならないからです。湖川限定で考えても本来10本程度のフライロッドが必要になります。素材や好み、たまにはアクションの変わった物を使いたいと考えると更に増えてしまい、コレクターでない実践的フライマンの私でさえも20本を超えています。
実は今回のロッド作りに携わってチャリスペをここまでの完成度にしたチャーリーに感服いたしました。利点1、フライをポイントへスムーズに運ぶ機能性が抜群に良い。ティップからバットまでのパワーの伝達がスムーズで安定感があり特に優れています。2、フキングの合わせのタイミングを取りやすい。ティップがバットに遅れずほぼ同時に始動しはじめる。一見、固めに感じるが20cmクラスのヤマメやイワナでもロッドが程よく曲がり魚がバレない。またグリップを通じて魚の動きをダイレクトに感じるのも好みです。 チャリスペ7フィート6インチ#3・4は対象魚をヤマメ岩魚としキャスティング距離を約10ヤード以内としたロッドに設計してあります。チャリスペ8フィート4インチ#4は川幅が広めで流れの筋が何本か有る中流域を対象とした設計になっています。キャスティング距離は15ヤード前後までがベストです。 更に遠投やパワーを要する河川や湖ではチャリスペは不向きだと言って良いでしょう。ロングキャストをしたいのなら飛ばす事を第一の目的としたUS製ロッドを推奨します。 これらのロッドはおおむね反発力が強く力のメリハリを付けなくともトラブルが少なくキャスティングが出切るのが強みです。しかしパワーロッドは対象魚を40cmクラスのレインボーにしてある為、キャスティングが安易なぶんロッドを立てすぎるとヤマメや岩魚の小魚がばれる傾向にあります。ヤマメや岩魚の20cm前後を釣るには若干不向きな感じがします。それでも最近の技術の進歩はめざましく中にはバットの強さをティップの繊細さ(細さ)でカバーし、バレを克服してあるロッドもあります。 US製のロッドがすべて小ヤマメや小イワナに向かないと云う訳ではありません、US製ロッドでも日本向きに設計したロッドも多数あります。これらのロッドはチャリスペよりトルクの面(ロングキャスト)で優れています。それでも万能とは言えません。やはり行き着くところは何本かのロッドが必要になると云う事になります。 付きつめてロッドを考えるとロッドは使いやすさだけで求めるものではないと思います。日本的な考えですが味わいが良いとか簡単に思うがままにならないから好きだと云う釣り人もいます。ですからキャスティングが難しいと言われるロッドの愛好家が大勢いるのです。 最後にフライロッドもゴルフクラブも好みと機能に応じて使用するのが良いと思います。
そして一般的に難しいと言われるフライロッドも使える様になってみてください。更にフライフィッシングの面白さが判明できると思います。

 勝手なことを申し上げましたが三十数年間フライロッドを持って釣りをして来ました私がS社のロッドを使いこなすようになれたのは約10年くらい前からです。その原因の多くは自分には合わないと決めつけてチャレンジしなかった自分がいたからです。ちなみに平成23年の秋から始めた妻は最初からSCOTT804JSを使用しています。もちろん下手ですが・・・!なんの支障もありませんです。

この写真は妻が3度目のフィールドで釣った魚です。



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