ニ年前にリリースしたブラウンが再び 何年か前にニュージーランドへ釣りに行ったと時のことです。 友人の遠藤氏と私がガイドの斉藤完治にハタプリバー連れていかれました。 この川は牧場の中を蛇行しながらゆるやかに流れるスプリングクリークのような雰囲気の川で、川の中には牧場を切り開いたときの物と思われる一抱えほども有る南極ぶなの大木が何本も横たわっていました。 幾つめかのポイントでの事でした、この淵ではニ年前に遠藤氏が姿の良い55cmほどのブラウンを#5のオービスをバットから曲げながら倒木をよけ難とかキャッチした記憶が鮮明に残っていました。「孝夫さんこの場所ちょっとやらせてくれ。」と私のほうを見ました。互いに含み笑いをし、遠藤はポイントへ静かに下りて行きました。私達は何度かのニュージーランドの釣りでブラインドフィシングでドライフライに出て来そうな場所を知っていました。 彼は素早くかつコントロールよくキャストをした。ハンピーがティッペトの付いているのを感じられないようにゆっくりと流れて行く、するといきなり水面をもりあげて大きな口がスロモーションビデオを見ている様に開きハンピーをくわえて反転ていき、その瞬間遠藤のロッドはニ年前を思い出したかのようにきりきり鳴り響きリーダーは水中を走り回り、何度も倒木の下に逃れ格闘の末手にしたブラウンは精かんな顔のジャックでした。「孝夫さん二年前の奴がいたよ。」「遠ちゃんどう60くらいに育っているか?」「いや50に縮んでる」「それじゃ二年前の息子かな」「いくらなんでもそこまで育たんだろう」「じゃあ二年前の弟か」「どうりでハンサムで良く似てるわ!」こんな二人の会話を聞いていたガイドの完治は私達を笑いながらフックを外しました。そして遠藤は無言で弟をリリースした。 よし次は俺の番だと、完治の見つけた50cmクラスの魚にトライしょうと静かに土手を降りて行きました。ラインを出してロッドを振ろうとし足元を確認した瞬間私の心臓が飛び出しそうな激しい鼓動にみまわれました。「チョッちょっと待て、いたいた直ぐ下」私のすぐ足元ロッド一本分、草の陰に居るではないか60オーバーが、心臓が波打つまま最初のキャストし様とした私は思わず絶句、なんとトイトイの葉が魚の真上に。よし一発勝負だキャストしたラインいやリーダーはトイトイの葉の上にそっと置かれるように落ちた。魚の先に落ちたフライがゆーっくりと流れ出し私の心臓の鼓動だけが聞こえているのがやたら長かった。 たった5・60センチ流れるフライを途中で止まらないでくれと祈り念力を送りつづけた。そのの甲斐あってフライがなんとか魚の前に着くと潜水艦のようなヤツがゆっくりと浮上してきてハッチを開けてブラウン・ビートルを吸いこんでいった。なんとか取りこんだブラウンは62・3センチ6ポンドクラスのグッドサイズでした。その後四・五十メートルほど上流の広大なプールで10ポンド.オーバーのブラウンを発見。彼は水面直下でイマージャーを食っていたが、当時の私の腕が未熟だったのでフックに掛かることは無かった。