渓吉と渓太テンのいた堰堤

少年の日の思い出(テンのいた堰堤)

10代の渓吉と弟の渓太が電車とバスに揺られ渓流に付いたのはすでに午前10時を過ぎていた。渓流では山吹の花が咲き終り青葉がいっそう茂っていた。このころになると毎年鮎釣りが始まり、渓流釣りの釣り人が鮎釣りに専念するようだった。そして釣り人が幾分少なくなった渓流は静けさを取り戻していた。そして渓吉と渓太が一番輝く時期でもあった。遡行で汗ばむ渓流は春ゼミや小鳥達の歌声があらたににぎわいをかもし出していた。
入渓から2時間が経過したころ堰堤に到着した。兄弟は逸る気持ちを抑え木陰で手ごろな石に腰かけで休憩を取りことにした。午前中の釣果を語り合い、昼飯をぱくついていた。すると1匹のテンがひょこひょこと何処かからやってきた。河原で一番高い石の上に登ったテンは渓吉達を見つめ何かを言いたそうな仕草をしていた。少しの間見つめ合った1匹と2人だがその後テンの方から岩陰に消えていった。

渓吉と弟の渓太は食後、すぐ上流に見えていた堰堤から釣りを始めた。
いきなり渓吉のロッドが弧を描く、近くで見ていて支度をしていない弟の渓太がよっていった。「大ヤマメだ。」渓太が叫んだ。渓吉は何度か大石のエゴに潜られそうになったが彼のパワーが少しずつ失われて行くのを感じた。大ヤマメを丁寧に引き寄せネットに納めた。ネットの中で大きく湾曲したヤマメを見ながら胸の鼓動で興奮を隠しきれなかった。一部始終を見ていた渓太は渓吉の釣った大ヤマメとテンのユーモラスな仕草を今でも脳裡に焼き付けられ青春の思い出となっている。
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