ナチュラル・ドリフト

ナチュラル・ドリフト

フライフィッシングをたしなむ者なら必ず耳にする言葉ですがこれほど難しい話は無いと云えます。なぜならばどこからどこまでをナチュラルドリフトと云えば良いのか定義がありません。魚にとってナチュラルドリフトと個々の釣り人の取ってのナチュラルドリフトにかなりの差が生じているからです。またナチュラルドリフトが釣りをする理論上いつもベストだとは限らないからです。ナチュラルドリフトが流下物によってかなり異なるのも現実です。

1、流下物とナチュラルドリフト
流下物の形状によって空気抵抗や水中での流れ方が異なります。明らかにウイングを広げたダン等はヨットのようにウイングの空気抵抗が有ります。当然風の影響を受けます。スピナーやイマージャーのように水面にへばり付いた状態で流れる虫はウイングがないぶん風や空気抵抗は極少ないでしょう。それでも水面と大気の間には空気抵抗が存在しさまざまな状態によって異なります。魚や釣り人がそれらをどこまで認識するかまた必要性が在るか個々の釣り人の考え方やフィルドによっても異なります。フライが実際の虫と形状が異なるのも考慮するとなお更に難しい問題になります。個人的にはナチュラルドリフトは個々の釣り人が経験の中から思い思いに認識していればよい事だと思います。それより魚にとっていかに魅力的にフライを流すことの方が重要だと経験が多ければ多いほど感じてくるような気がします。

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2、目の前に落ちた物はすぐさま食いつく
どんなにリアルに出来ているフライより僅か目の前20cmに落ちた出来そこないのフライが魚にとって以下に魅力的である事を釣行歴の長い釣り人であれば経験上ご存知と思います。そのフライがティペットを感じさせないように本物と変わらないくらい極自然にソフトに落ちたなら考える余地は有りません。フライの質量も影響しますが大きな音が出るように落ちたとしても魚は人間以上に幅広く経験を積んでいるようです。魚は強風や鳥が落とした状況と昆虫が自ら力尽きて落ちた状態と異なるのを認識しているかのように感じる事も多々ありました。目の前にフライを落とすにはメイフライパターンではソフトに落とすことを心がけ、質量のある大型のカディスやテレストリアルでは大き目の音を立ててもあまり問題はないようです。私の経験では少しはなれた場所へフライを落とすときにはあえて少し大きい音をたてるのもありのように感じます。特に釣り人を知らない魚には効果があるように思われます。源流のイワナ釣りで誤って魚の後方にフライを落としてしまった時に1mも前に居た魚が振り向いてフライを食いにきた経験を何度かあたからです。山奥深い谷ではこのような事は頻繁に起こりえることです。それでも浮いている大型魚を見つけた時には目の前20cmにソフトに落すのが一番です。無反応な魚は体調が悪いか前日釣られて疲れきった魚でしょう。通常は簡単にフライにアタックしてくるものです。

3、誘われて食いつく
フライの動きに誘われて食いつく魚がよくいます。これらの多くが自然の虫の動きに誘発されて食いつく場合です。忍野のフタシジモンカゲローのどは典型的な状況です。ナチュウラル(本物)でさえ水面で動かなければ魚に食われることはめったにありません。しかし水面をパタパタと飛びたとうとする様は魚達にとってよほど魅力的なのか盛んにアタックしてきます。なかには空中の虫にさえ飛びつく魚もいます。当然と言ってよいようにフライも同様に水面で動かす方が釣れます。スケーティングカディス等が同様です。カディスにはあきらかに水中をミズスマシのように泳ぐ物がいます。以前、NONTANAのM川で銀色の輝く大量のダイビングカディスを目撃した事があります。その時にはニンフに気泡が付いた状態でよい釣りをしました。完全に水にぬれニンフから気泡がとれた状態では極端に当たりがなくなり、釣れる度にパウダー・フロータントを付けてのニンフ・フィングでした。たしかに動きも重要ですが私が思うには水中での虫の状態をいかに表現できるかが必要に感じられました。すなわち大きくアピールする動きをのぞいて、水中の魚は動きより視認(見た目)のように思われます。20年ほど前のT川で大量にハッチしたコカゲロウのライズの嵐でした。定番通りハッチのピークになると魚はイマージャーを食っているのか一向にフライに出ません、ナチュラルでさえも水面から消える事がありません。私達はイマージャータイプのフライを流しましたが殆ど当たりがありませんでした。当時わずかに釣れた魚の胃の内容物とフライが合っているかを確かめなかったのを今でも悔やんでます。その後の経験からイマージャーや水中羽化のメイフライには動きより付着した気泡が大きな役割を果たしていると考えるようになりました。

4、流速とナチュラルドリフト
流速の早い場所ではナチュラルドリフトをどのように考えたら良いか。ナチュラルドリフトと言う言葉のように自然に流れる流下物の速度(変化も含む)と理解してよいと思います。しかしながらその速度が魚の捕食範囲をこえてしまっている場合にはあえてナチュラルドリフトを無視する必要性もあります。そのような時点ではフライを魚の捕食できる速度に減速して流すと良い結果がみこまれます。また捕食範囲の流速の高速限界付近では魚が捕食に集中していて比較的釣りやすく、止水や極めて低速のプールなどでは魚に余裕が有るのか?フライやティペットを見られる事が多々あります。どちらにしても魚は捕食しやすい所からフライにアタックしてきます。そのような場所を釣りではポイントと言います。付け加えておきますがポイントが必ずしも棲家ではありません。捕食場所と塒(ねぐら)とは一致いたしません。以前に魚の居る所を釣ると提言いたしましたが魚が捕食する場所と理解してください。それが判れば特別な技術は限りなく不必要になります。それはポイントにストレートラインでフライを直接落とせばよいからです。ナチュラルドリフトは通常30・40cmですむからです。30・40cmなら釣り人の立つ位置だけでほとんどが解消できます。またスレたイワナのように5秒間以上フライを見せる事が必要なことがありますが例外です。私のように60歳を過ぎた年齢では流速やバックの状況から立ちたい位置が確保できない場合も多々あります。その時に少なからずトリックキャストの必要性が出てきます。

5、ナチュラルドリフトの意議
そもそも私は完全なるナチュラルドリフトなど存在しないと思っています。
リダーが付いている以上は何らかの形で流れているフライに影響を及ぼすからです。マイクロドラッグがどうのこうのと考える前に魚の食いたい所へ食いたいフライをキャストする事が一番ではないでしょうか?魚の気持ちになってフライを巻きフライをキャストする。それは魚の食いたい範囲(捕食範囲や捕食次期、時間)に食いたいフライを使えばよいことです。そして魚の習性を良く知る事です。あえて長い距離フライをドリフトする事を見直し考えなおしてみてはいかがですか。それでもフライフィッシングにはナチュラルドリフトは重要です。当然、ハッチ・マッチも重要なことです。そして水生昆虫の姿形ちだけではなく生態をも観て知ることが最も重要な要素だと思います。

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